女王様

3/4
前へ
/47ページ
次へ
女王陛下がそう仰るからには、これ以上質問することはできない。さっきは思わず声に出してしまったけれど、直接質問するなんて、本当なら罰せられてもおかしくないことだった。とは、後からハルジオンに教えられたことだ。 ロウンやハルジオンは転生人について、どこまで知っているんだろう。 なぜガネーシャは転生人の研究をやめて、わたしと森に住むことにしたんだろう。 分からないことだらけだ。 ひとつを知ると、それ以上に知りたいことが増えてしまう。 「そなたたちにやって欲しいことがある」 女王陛下はわたしたちの顔を順に見回し、続けてわたしたちに秘密の任務だと言って唇の端を吊り上げた。 「ハリアールに潜んでいる転生人を見つけ出して欲しい。そしてこの世界へ転生人を召喚し続けている魔法士を探すのだ」 「女王陛下、アンとリッドはまだここへ来たばかりです。とてもそのような大任は」 慌てるハルジオンに、女王陛下は軽く笑って言った。 「ハリアールで一二を競うお前たちが付いているのだ。問題なかろう」 ハルジオンは顔を引き攣らせ、ロウンも真剣な顔で何かを考えている。 転生人はハリアールの中にいる誰かの体を乗っ取っている。そして、魔法士の誰かが、この世界に別の世界の誰かを召喚している。 いったい何のために? もしかしたら自分の体が乗っ取られてしまうかもしれないのに、どうしてそんな危険をおかすのだろう。 そしてガネーシャたちはどこまで転生人について分かっていたのだろう。 どうして召喚魔法を使ったのだろう。 「これはわたしの考えに過ぎないが、この世界への召喚魔法を繰り返している魔法士は、最初の転生人、もしくはそれに近しい人物である可能性が高い」 「最初の召喚について知る人物は限られていますよね」 ロウンが確認するように言うと、女王陛下はうなずいてそれに答えた。 「そして今もこれらについてはトップシークレットだ。そなたたちも決して口外せぬように」 そこまでで女王陛下は公務のために部屋を出て行かれた。 わたしたちも長い緊張から少しだけ解放されたのだった。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加