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女王陛下がそう仰るからには、これ以上質問することはできない。さっきは思わず声に出してしまったけれど、直接質問するなんて、本当なら罰せられてもおかしくないことだった。とは、後からハルジオンに教えられたことだ。
ロウンやハルジオンは転生人について、どこまで知っているんだろう。
なぜガネーシャは転生人の研究をやめて、わたしと森に住むことにしたんだろう。
分からないことだらけだ。
ひとつを知ると、それ以上に知りたいことが増えてしまう。
「そなたたちにやって欲しいことがある」
女王陛下はわたしたちの顔を順に見回し、続けてわたしたちに秘密の任務だと言って唇の端を吊り上げた。
「ハリアールに潜んでいる転生人を見つけ出して欲しい。そしてこの世界へ転生人を召喚し続けている魔法士を探すのだ」
「女王陛下、アンとリッドはまだここへ来たばかりです。とてもそのような大任は」
慌てるハルジオンに、女王陛下は軽く笑って言った。
「ハリアールで一二を競うお前たちが付いているのだ。問題なかろう」
ハルジオンは顔を引き攣らせ、ロウンも真剣な顔で何かを考えている。
転生人はハリアールの中にいる誰かの体を乗っ取っている。そして、魔法士の誰かが、この世界に別の世界の誰かを召喚している。
いったい何のために?
もしかしたら自分の体が乗っ取られてしまうかもしれないのに、どうしてそんな危険をおかすのだろう。
そしてガネーシャたちはどこまで転生人について分かっていたのだろう。
どうして召喚魔法を使ったのだろう。
「これはわたしの考えに過ぎないが、この世界への召喚魔法を繰り返している魔法士は、最初の転生人、もしくはそれに近しい人物である可能性が高い」
「最初の召喚について知る人物は限られていますよね」
ロウンが確認するように言うと、女王陛下はうなずいてそれに答えた。
「そして今もこれらについてはトップシークレットだ。そなたたちも決して口外せぬように」
そこまでで女王陛下は公務のために部屋を出て行かれた。
わたしたちも長い緊張から少しだけ解放されたのだった。
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