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魔法士見習いたち
すり鉢状の講堂にずらりと並ぶ机と椅子。そこに集まったのは四十人ほどだった。
年齢は十歳から二十歳くらいまで。ほとんどは男子で、女の子は数人しかいない。
だいたいがふたり一組になっているから、チューターと魔法士見習いのペアなのだろう。
そんな中でも、ロウンとハルジオンはひときわ目立っている。
そしてなんとなく、わたしとリッドも彼らの噂になっているようで、時々視線を感じる。
リッドが居心地悪そうに隅の椅子に座ろうとした時だ。突然椅子がすっと動いてリッドは危うく転びかけた。
でもリッドは反射神経のいい狼だ。すぐに回転して体勢を立て直すと、周りをぐるりとにらみつけた。
誰かがイタズラしたのは明らかだった。
その次はわたしの番だった。
手に持っていた教科書の綴じ紐が突然切れて、床に紙が散らばっていく。
それも不自然に遠くへと飛び去っていく。
魔法が使われているのは明らかで、誰がやっているのかもすぐに見当がついた。
女の子のひとりだった。明るい金色の巻き毛をふたつに結んだ十歳くらいの少女は、お人形のようなかわいらしい顔に、笑みを浮かべてわたしを見ている。
さっきの椅子もこの子に違いなかった。
彼女のチューターらしき背の高い男性は、痩せていて、背中を丸めて顔をうつむけている。
そのせいで、彼女のイタズラに気づいているのかどうか分からない。
「ハルジオン、もしわたしがこの中の誰かに魔法を使ってイタズラしたら、あなたはどうする?」
「そういうことに魔法を使うべきではないと注意するね」
ハルジオンも気づいている。
「一度目は無視するわ」
わたしは散らばった紙を拾い集めて、リッドの隣の席に座った。
あまり好意的ではない雰囲気に、リッドは低く唸り声を上げている。
「助けて欲しい時はそう言え。基本的には自分の力で解決すること」
ロウンはそう言って後ろの段の席に座った。そういうところがガネーシャに似ていて、やっぱり親子なんだなと思わされた。
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