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何かを言いかけたミリアーナの肘を、タネンが掴んで引き寄せる。
それはまるでミリアーナが余計なことを言わないように口止めしたようにも見えた。
「とにかく、分からないことがあるならわたしに聞いてもいいわ」
ミリアーナはちょっと慌てたようにタネンの手から離れた。その様子が怯えているようにも見えて、あれっと思う。さっきはタネンをかばっているようにも見えたのに、今度は怖がっている。
ふたりのことをもっと知りたい。そう思ったわたしは、ミリアーナの言葉に甘えることにした。
「ありがとう、ミリアーナ。じゃあさっそくだけど、どこに行けば鳥たちに会えるか知ってる?」
わたしの質問に、ミリアーナは首を傾げる。
「あなたって本当に変わってるのね。鳥なんて空を飛んでるか、木にとまってるものでしょ?」
「森ではそうだったんだけど、ここに来てからはまったく見てないの。鳴き声もしないわ」
ミリアーナは眉をひそめて少し考え、やがてあきらめたように首を振った。
「分からないわ。見かけたら知らせる。それでいい?」
ミリアーナとはそこで別れ、わたしたちは一旦家に戻ることにした。
もうすぐ昼食の時間だ。
午後はリッドと街の中を見て回ることにした。なぜならロウンはガネーシャに連れて行かれたままだし、ハルジオンも呼び出しがあって出かけてしまったからだ。
「ねぇリッド、この街をどう思う?」
「どうって?」
「森とはずいぶん違うみたい」
「家も人間も多いし、臭いも変だよ」
鼻をひくひくさせるリッドがかわいくて、わたしはちょっと笑った。
「森はみんなのもので、誰のものでもないと思ってた。でもここはすべてが誰かのもの。空や空気まで誰かに借りてるみたいな気がする」
リッドはわたしの言葉にうなずいた。
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