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とても大きくて優しい感じのする木だ。
ほんの少し森を思い出してほっとする。
しばらくの間葉擦れの音に耳を澄ましていると、微かに鳥の鳴き声が聞こえた。
得意そうに振り返ったリッドと目を合わせて、笑い合う。鳥が逃げてしまわないように気をつけて。
そしてこの嬉しさを共有できる人がそばにいることが嬉しかった。
「リッド、見つけてくれてありがとう」
「アンのためなら何でもする。そのために俺はここに来たんだ」
「リッド、そんなふうに思わなくていいよ。リッドはリッドのやりたいことをやって良いんだから」
リッドは少し目を見開いて驚いたようにわたしを見ていた。
「アンもそんなふうに思わなくていい。無理してここにいるわけじゃないんだ。俺は誰かのために生きてる方が好きだから」
面倒見のいいリッドらしい。きっと森ではマイたちをずっと守るために生きていたんだろう。そして、今はわたしのために。
わたしは誰のために生きてるんだろう。
誰かのために生きなくちゃだめなのか、そうでないのか分からない。
でもわたしはリッドの気持ちが嬉しかった。だから、わたしも誰かにそう思ってもらいたいと思う。
「リッド、すごいね」
「何が?」
「わたし、リッドと友だちになれて良かった。それだけでもここに来て良かったって思えるよ」
リッドはまた大きく目を見開いて、ちょっと赤くなった。
「……俺、も」
小さな声はそれだけようやく聞き取れた。でもふたりとも同じ気持ちだと分かったから、わたしたちはどちらからともなくまた木を見上げた。
その時、枝が大きく揺れて鳥たちが一斉に飛びたった。
透明な鳥たちが飛びたつのを、わたしたちははっきりと見ていた。
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