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幕間〜リッド〜
全身が切り裂かれるような痛みと痺れで意識が遠くなりそうだった。
それは魔女の住む家に行くために、普段は立ち入り禁止の区域へ足を踏み入れたときだ。
ラルゴがマイを背負ってついてきてくれる。俺は何としても魔女の元へ行かなれけばならなかった。
小さな家にいたのはいかにも厳しそうな魔女と、長い髪の女の子だった。
それがアンとの出会いだった。
その家で突然男が俺をどこかへ連れて行くと言った時、アンが行くなら行ってもいいと思った。
どうしてか分からないけど、アンから目が離せない。
マイを助けてくれた恩人だからだと最初は思っていた。
ハリアールとやらに行くために使う移動魔法は魔女の結界魔法よりずっと最悪だった。
吐き気はするし頭が割れるようで、全身がギシギシと軋んでるみたいに痛んだ。
朦朧とする意識の中、何日目かに爽やかな風を感じた。それまでの気持ち悪さや体中の痛みがひいていく。
両手から流れ込んでくる風が苦痛から救ってくれているのだと分かった。
そして目を開けた時、目の前にアンがいた。
アンは何度も俺を助けてくれた。この恩はいつか必ず返さなければならない。
その一心でアンについていくと決めたけど、アンはそんな風に思わないでいいと言ってくれた。
驚いた。何かしてもらったら返す。それが当たり前だと思っていた。アンの言葉は澄んだ水の流れみたいだ。
その時分かった。俺はアンに借りを返したいんじゃない。アンのそばにいたい。そのために、俺にできることを探す。
胸の奥が不思議と熱くなって、アンの為なら何だってできる気がするんだ。
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