神様の友人

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次に千季に会えたのは、放課後。 教室に戻らなかった千季のカバンを持って僕はひとり待っていた。 「っ千季!」 人気も去り、薄暗くなった廊下で。 一人指導室からでてきた千季を今度はちゃんと捕まえた。 キョトンとした千季が僕を見ている。 ここに来るまで、幾度となく頭の中で巡らせた、したかった言葉がすっと頭から抜け去って。 溢れたのは四肢滅裂な言葉ばかり。 「ごめ、ごめんね、僕のせいで、千季は何にも悪くないのに!僕が、僕がちちゃんと、」 頭の中が白く塗りつぶされるような感覚。 ああ、僕はいつもこんなんばかりだ。 嫌に、嫌になるこんな自分。 いっその事、何も見えなくなって、聞こえなくなってしまえば… 「碧!」 ピンッとおでこに痛みが走った。 「千季…痛いよ」 「碧、また考え込んでたでしょ?」 ニシシと笑う千季に僕はおでこを擦る。 「あのさ、ごめ、」 「謝るのはなーし!先生にはちゃんとぜーんぶアイツらのこと話してやった!私えらい!」 ぶいっとピースサインを作る千季に、思わず言葉を失う。 「…僕のせいで怒られたんじゃなかったの…?」 「怒られたとも!何でああなったのか聞かれたから、ぜーんぶ今までの事と、これまでの経緯話してやった!近いうちにでもHRとかでアンケート取るとか言ってたし、アイツらも終わりだねぇ」 結構、アイツら周りも関係なしでやってたから、鬱憤溜まってる人いっぱいいるよ〜、と笑う千季に力が抜ける。 思わず床に座り込んだ僕に顔をグイッと近づけて、またニシシと笑う。 「碧は、なんにも悪くないよ。悪いヤツらは千季ちゃんが成敗してやったから、安心してね!」 廊下の窓から差し込む夕日が千季を後ろから照らす。 僕にとって彼女は正義の味方で肯定してくれる神様みたいな存在だった。 夕日に照らされた、その姿にゾッとする自分がいる。 怖い、と思ってしまった。 そんな自分が嫌だとも、思った。 人間は本当に綺麗なものを見た時、ゾッとするのだと何かで読んだ、言葉が頭を過ぎる。 「帰ろっか…」 どれだけ頭を動かしても。 絞り出せたのはその一言のみで。 「うん!」 千季はカバンを片手に、座り込んだ僕の手を引く。 いつの頃からか、千季は僕にとっての神様だった。 肯定してくれるから神様になったのか、こんな僕に手を差し伸べてくれるから神様になったのか、もう僕には分からない。 神様と僕。 2人で夕日の差し込む廊下を歩いた。 明日から、また日常は少し変わるのだろう。 そんな明日に思いを馳せながら、僕らは帰路についた。 もしも世界が2人きりなら、僕らはきっと幸せにはなれない。
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