貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

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 ふわふわと漂いながら、寝台を見下ろす。  そこには私とうり二つの――というか私そのものの身体があった。 『できれば目を覚ましたい、とは思ってたけど、こういう意味じゃなくて……』  抜け殻となった自分の身体にふわふわ近づき、無意味に頬に触れようとして空振った。  しかたないので、寝台横でじっと祈るように手を組んでいる銀髪碧眼の美しい人……私の婚約者を眺める。  その表情は悲壮という他なく、囁くような声で「何でもする。何でもするから、……目覚めてくれ」と繰り返している。  その様子にやっぱり首を傾げてしまう。 『それにしても、彼と私、こんなふうになるほどの関係じゃなかったと思うんだけど……?』 「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」  魔術学院の二年生に進学して少し経った頃。婚約者にそんなことを言われた。  言われた私はといえば、「それはもう最初から分かっていたことでは?」と思っていた。
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