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第一章 初めてのワルイコト
私に〝ワルイコト〟を教えたのは、初対面の知らない男性でした。
「……はぁっ」
池の鯉を見ながら憂鬱なため息をついてしまい、苦笑いする。
今日は私のお見合いで、老舗ホテルに来ていた。
「うん。
まあ、わかってたし」
私の独り言を知らず、鯉はのんきに泳いでいて羨ましくなった。
私の父は石油取り引きを生業にしている、『アッシュ』という大企業を経営している。
私はいわゆる、ご令嬢というヤツだ。
そしてお見合いの相手は旧財閥『三ツ星』のご令息。
大財閥だったが故に戦後に解体されてしまったが、それでも現当主は核企業だった『三ツ星造船』の社長をしている。
御曹司もグループの海運業会社で社長をしているという話だ。
といってもここまでは伝え聞いて知っている情報で、私自身は彼についてなにも知らない。
その名前すら、だ。
お見合いが決まり、釣書や写真を両親は見せようとしたが、すべて拒否した。
だってそうでしょう?
要するにこれは政略結婚で、お見合いをする以前にもう結婚は決まっているのだ。
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