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「ん?」
「手、手を握ってください……!」
「いいよ」
さっきと同じように、今度は両手を握ってくれる。
それで安心できるのは、刷り込みなんだろうか。
「イっていいよ、茜」
促すように彼の動きが速くなっていく。
自分でも、そのときが近いのがわかった。
――そして。
「あっ、あっ、ああーっ!」
身体がこわばり、悲鳴じみた声を上げる。
同時に、薄い膜越しにどくっ、どくっと白濁が吐き出されるのを感じた。
次第に身体から力が抜け、視界が戻ってくる。
「満足したか」
「……はい」
これ以上ないほどの満足感が私の身体を支配する。
結婚前の女性が男性と関係を持つなんて、両親は激怒するだろう。
わかっていて、やった。
そうしたかった。
「コマキさん。
……好きです」
好意はあるが、この言葉に愛だの恋だのはない。
ただ、私は素敵な殿方と恋がしたいという願いを叶えたかったのだ。
「俺も茜が好きだよ」
きっと彼もそれをわかっている。
わかっていて、付き合ってくれる彼は優しい。
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