第一章 初めてのワルイコト

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「ん?」 「手、手を握ってください……!」 「いいよ」 さっきと同じように、今度は両手を握ってくれる。 それで安心できるのは、刷り込みなんだろうか。 「イっていいよ、茜」 促すように彼の動きが速くなっていく。 自分でも、そのときが近いのがわかった。 ――そして。 「あっ、あっ、ああーっ!」 身体がこわばり、悲鳴じみた声を上げる。 同時に、薄い膜越しにどくっ、どくっと白濁が吐き出されるのを感じた。 次第に身体から力が抜け、視界が戻ってくる。 「満足したか」 「……はい」 これ以上ないほどの満足感が私の身体を支配する。 結婚前の女性が男性と関係を持つなんて、両親は激怒するだろう。 わかっていて、やった。 そうしたかった。 「コマキさん。 ……好きです」 好意はあるが、この言葉に愛だの恋だのはない。 ただ、私は素敵な殿方と恋がしたいという願いを叶えたかったのだ。 「俺も茜が好きだよ」 きっと彼もそれをわかっている。 わかっていて、付き合ってくれる彼は優しい。
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