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「いたっ」
私の額をその長い指で軽く弾き、彼が意地悪く右の口端を持ち上げる。
コマキさんの言うことは確かに、一理あった。
しかし、大丈夫だと言い切る自信がどこから出てくるのかわからない。
「そうですね……」
「だから、ほら」
これを着ていけとでもいうのか、昨日彼が来ていたシャツを渡してくれる。
「服はあとで持っていってやる」
「わかりました」
渋々ではあるけれど、シャツを羽織って浴室へ向かった。
「服、おいとくなー」
「あ、ありがとうございます」
頭と身体を洗っていたら、ドアの外から声をかけられた。
終わって出ると、昨日着ていた服……ではなく、上品な桜色のワンピースが置いてある。
それしかないのでとりあえず、それを着て出た。
「あの……」
「昨日のあの服で帰ったら、親御さんの怒りレベルが上がるだろ?
少しでも下げてやろうと思って、寝てるあいだに準備しといた」
「ありがとうございます」
なんでもないように彼が言う。
そういう気遣いが嬉しくて、自然と頭を下げていた。
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