第二章 楽しいワルイコト

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「いたっ」 私の額をその長い指で軽く弾き、彼が意地悪く右の口端を持ち上げる。 コマキさんの言うことは確かに、一理あった。 しかし、大丈夫だと言い切る自信がどこから出てくるのかわからない。 「そうですね……」 「だから、ほら」 これを着ていけとでもいうのか、昨日彼が来ていたシャツを渡してくれる。 「服はあとで持っていってやる」 「わかりました」 渋々ではあるけれど、シャツを羽織って浴室へ向かった。 「服、おいとくなー」 「あ、ありがとうございます」 頭と身体を洗っていたら、ドアの外から声をかけられた。 終わって出ると、昨日着ていた服……ではなく、上品な桜色のワンピースが置いてある。 それしかないのでとりあえず、それを着て出た。 「あの……」 「昨日のあの服で帰ったら、親御さんの怒りレベルが上がるだろ? 少しでも下げてやろうと思って、寝てるあいだに準備しといた」 「ありがとうございます」 なんでもないように彼が言う。 そういう気遣いが嬉しくて、自然と頭を下げていた。
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