第二章 楽しいワルイコト

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「じゃあ、送っていくな。 それで俺が勝手に連れ出したんだ、茜は悪くないって説明してやるから心配しなくていい」 その気なのか、彼は会ったときのスーツ姿になっていた。 この人はどこまで素敵な人なんだろう。 ああ、こんな一時の仮初めの恋じゃなく、本当にこの人と恋がしたかったな。 しかしそれは、私には許されないのだ。 「あの。 送ってくださらなくて大丈夫ですので。 ひとりで、帰れます」 もう、十分に迷惑をかけている。 なのにさらに、父に罵倒され、もしかしたら暴力も振るわれるような目には遭わせられない。 「本当に大丈夫か?」 眼鏡の下で、彼の眉間に深い皺が刻まれる。 そこまで私を心配してくれるのが嬉しくて、胸が詰まっていった。 「はい、大丈夫です。 これは私の意思で、私がやったことです。 だから、コマキさんには責任がありません。 お気遣いありがとうございます」 彼を安心させようと、できるだけの顔で微笑む。 それを見て彼は、小さく息を吐き出した。 「わかった。 じゃあ、健闘を祈る」 笑った彼が私に拳を突き出してくる。
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