第二章 楽しいワルイコト

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いや、一卵性の双子という可能性も捨てきれないが。 しかし本当にコマキさんだとすれば、急に都合が悪くなってお見合いが延期になったのも頷ける。 「それでは、うちの娘をよろしくお願いいたします」 「こちらこそ、よろしくお願いいたします」 笑顔を貼り付けて聞かれたことにだけ答えているうちに、お見合いは成立していた。 まあもっとも、私に拒否権なんてないんだけれど。 「すみません、少々凛音さんをお借りしても? これからの相談をしたいものですから」 「ああ、そうですね。 いいよな、凛音?」 「はい」 父から聞かれて、承知した。 私だって炯さんとふたりきりになって、聞きたいことがある。 「じゃあ、行きましょうか」 「はい」 促されて一緒に部屋を出る。 「ラウンジのカフェでいいか」 「はい」 反対する理由もないので、頷いて一緒にエレベーターに乗る。 回数表示を見つめながら炯さんは無言だ。 私も黙って立っていた。 ラウンジではすぐに席へ案内された。 彼はコーヒーを、私はグレープフルーツジュースを注文する。
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