第二章 楽しいワルイコト

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そのタイミングで頼んでいたものが運ばれてきて、慌てて手を引っ込めた。 「というか、知ってて黙ってたんだとしたら、意地悪です」 上目でじろっと、抗議を込めて彼を睨む。 「だから『また会える』って言っただろ?」 「それは、そうですけど……」 炯さんは涼しい顔でコーヒーを飲んでいる。 アレでわかれと言われても、無理がある。 「凛音、俺が見合い相手だと全然気づいてないみたいだったからな。 だから、正体を隠してた。 すまん」 散々私をからかって気が済んだのか、彼は真摯に私へ頭を下げた。 「いえ……。 なにも知らなかった私も悪かったと思いますし」 せめて相手の顔写真くらい見ておけばよかったのだ。 そうすればこんな事態にならなかった。 しかし、もし彼がお見合いの相手だと知っていたら、悪いことがしてみたいなんて私の望みを話さなかった自信もある。 なら知らなくてよかったのかといえば、複雑な心境だ。 「許してくれるのか」 「はい」 「よかった」 顔を上げた彼が、眼鏡の下で目尻を下げて人なつっこくにぱっと笑う。
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