第二章 楽しいワルイコト

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少しのあいだ言われた意味を吟味し、私は嫁入り前なのに結婚相手とは違う人間――だとあのときは思っていた――とそういう行為におよんでしまったのだと思い至った。 「ソ、ソウデスネ」 あの夜を思い出し、声はぎこちなくなる。 震える手でグラスを掴み、ストローを咥えた。 「まあいいから、俺の家に移ってこい? それで俺がいっぱい、悪いこと教えてやるからさ」 「……え?」 つい、炯さんの顔をまじまじと見ていた。 悪いことを教えるとはどういう意味なんだろう? 「まさか、楽しい悪いことがあれだけだと思ってるのか? 世の中には一生かかっても遊び尽くせないくらい、楽しい悪いことがあるの。 俺が可能な限り、教えてやる」 私の気持ちがわかっているのか、炯さんが力強く頷く。 結婚すれば今度は良家の奥様という役割を押しつけられ、そのように振る舞うように強制されるものだと思っていた。 なのに彼は、私に自由をくれるというのだろうか。 「時間を無駄にしたくないからな。 だから早く俺の家に移ってきて、一緒に悪いことやろうぜ」
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