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仲良し?
クラスメイトのカラザ君は一匹の竜を孵化させている。
つい先日のこと。竜を引き当て、割らずに孵化させることに成功した。
先生にも誉められてメダルを進呈された。制服の胸で光る銀色のバッジがその証。
間違って本物の竜の卵を割ると最悪だ。大目玉で先生に叱られ、ネチネチ嫌みを言われる。おまけに反省文とレポートを書かされる地獄が待っている。
二人は夕食を選びに去っていった。
すると食事をしていたオムレットが、
「……あの二人、付き合ってるんですって」
「えっ、そうなんだ」
ふーん。
カラザ君とメンブランさんはお似合いだね。
ん?
付き合うって何?
今組んでいるバディと何か違うのさ。
鑑定に役立つの?
「いいなぁ、なんだか雰囲気良いし!」
「そうだね」
「もうっ! なにか外に言うこと無いわけ!?」
「えぇ……?」
何て言えばいいのさ。
面倒くさいなオムレットは。
僕らも仲良しだと思うけど……。
なんて言えない。恥ずかしいし。
女の子ってほんとうによくわかんない。
「あのね、二年生になって赤ちゃん竜を育てるには『鑑定コンビ』の良い関係が必要なんですって!」
「そ、そうなの?」
それは初めて聞いたけど大変そう。
孵化に成功した幼い竜は、そのまま自分の物になるわけじゃない。すぐに「育竜学科」つまり二年生が引き取って育てる。
別棟の二年生棟で竜を保育、ある程度まで育ててゆく。
二年生は授業と竜の飼育でいつもヘトヘト。緑の制服を着た二年生も食堂にいるけれど、みんな疲れている感じがする。
魔法学校ヒヨランドでは、一年生は普通の読み書き算術、体育、剣術などの授業を受けながら「竜卵鑑定」に挑む。先生が渡す卵をバディで孵化寸前まで温めてそして「声」との対話を試みる。
試験を経て二年生に進級すると「育竜学」を学ぶ。
そこでは竜の幼生を育てる。
でも、そこで退学する生徒も多い。
竜に気に入られず、魔法を授かる見込みの無い生徒たちだ。
三年生になるといよいよ「竜魔法」を学ぶ。
相棒となった竜から魔法を授かり、魔法使いへの道を歩むことになる。
でもそこまで残れるのはほんの一握り。毎年数人程度しか残れない。
三年生は赤い制服を着て誇らしげに学校を闊歩し、王宮へも出向いたりする。
「シェル、あたしに興味が無いならバディを解消する?」
じぃ、と睨むような顔でオムレットが言った。
「え……?」
「そうだわ、シェルなんて捨てて、別の子とコンビを組んでみようかしら」
ふふん、と意地悪く笑うオムレット。
勝手にすれば、と言いたいけれど。
でも、僕は知っている。
今まで誰とも上手くいかなかったことを。
原因はオムレットの性格だと思うけど。
「……君とコンビを組んで、上手くいく人なんているの?」
「なんでっすてぇ!?」
がっ、と彼女は僕の襟首をつかんだ。
顔が近い、めっちゃ睨んでる。額に青筋を浮かべながら。
「ちょっ……」
「おいおい、二人とも」
「あらあら、仲良しねぇ」
カラザ君とメンブランさんがニコニコしながら戻ってきた。
同じ定食のプレートを手に持って。
「「ちがうっ!」」
僕らの息のあった声が響いた。
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