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朝の修行も卵から
「おはよう諸君! ニワトリは竜にもっとも近い鳥だと云われている! 諸君は心して卵をひろい集めるように!」
朝から暑苦しい体育教師、キョーキング先生がいった。中庭の芝生に集まったのは十人。五組のバディたち。
僕とオムレット。
カラザ君とメンブランさん。
ボイルド様とベネティクトさん。
ランブル君とヨークさん。
フライドさんとポーチドさん。
竜卵鑑定学科、今期の一年全員の顔ぶれだ。
五組目のフライドさんとポーチドさんコンビは女子同士。
フライドさんはポニーテールが素敵な明るい町の子って感じで、ポーチドさんは実家が教会なので優しくて「聖女」みたいな印象のひと。
「なんでフライドとポーチドを見てるのよ」
ひえっ。
「べっ……べつに」
オムレットの鋭いジト眼に冷や汗がでた。
脇腹をつつかれて視線をそらす。
「シェル、あたしがお情けでコンビ組んであげてることを忘れないことね」
「ひどいいいぐさ」
フライドさんかポーチドさんと変わってもらえないかな。
いや、オムレットがあの二人どちらかと組んでも上手くいくとは思えないけれど……。
ちなみに僕が他の組のどちらかに「入れ代わりの決闘」と申し込んで勝利すれば、バディの片割れを交換できる。今の二人組を解消して組換えできるという仕組みもあるにはある。
もっとも、相手の相棒バディを奪うわけだから、その後はギスギスするだろうし、うまくいくはずもない。
何よりも勝負の方法が問題だ。
『卵の大食い勝負』『熱湯たまご風呂勝負』『頭に載せた卵を割った方が勝ちの剣術勝負』の三本だて。
僕が勝てる見込みのないのばかり。
「いいか! ニワトリが今朝産んだばかりの新鮮な卵を多く見つけた組が勝ちだ! ビリ組は南側トイレの掃除当番だ! はじめ!」
えぇえええ!?
悲鳴があがるなか、卵を見つける朝の鍛練がはじまった。
先生いわく「ニワトリの卵の気配を感じ、声を聞け! これも訓練だ」ということらしい。
「ムチャな課題……」
「シェル、ブツブツいってないで卵を探しなさいっ!」
「うん」
僕らは学校の中庭をあちこち探し始めた。
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