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康介は爆弾の仕組みから解除の仕方まで、凄まじい速さでマスターしていった。午後から行われる爆弾製造では、手先が器用なだけに先輩も越えて一番速かった。
だが、彼には称える人がいなかった。
一人で黙々と作業を終えていく。
そんな彼を遠目に見ていたチャンヒョクが、自分の爆弾を持ってきた。
「なあ」
康介は作業の手を止めず、目線もよこさない。
「オレの爆弾、何がおかしい?」
「…」
「点火装置に反応がないんだよ。」
「………」
康介はとうとう大箱2つの爆弾を作り終えて、立ち上がった。最後までチャンヒョクに返事をせずに作業場を立ち去ってしまった。
その日の夜。
同じ部屋のシノンにラジオの具合を見てもらっていた時に、康介の話になった。
「チャンヒョクさぁ…
ずっとアイツに話しかけるよね」
「まあな。
初日に話しかけたし。」
チャンヒョクは回転椅子をくるくる回しながら答えた。
「やめたほうがいいよ。
やっぱりアイツ、被験者だし。
頭がおかしいんだよ」
回転椅子がピタッと止まった。
「よし、直ったぞ」といったシノンに迫ったチャンヒョクは胸ぐらを掴んで壁に押し付けていた。
「な、なにすんだよ!誰か来てくれ!」
シノンの大げさな声は、壁の薄い軍舎ではすぐに伝わった。隣の部屋にいる同期や向かい部屋まで駆けつけてきた。
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