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「どうしたんだよ!」
シノンは胸ぐらを掴むチャンヒョクを怯えた目で見上げていた。
「きゅ…急につかみ掛かってきたんだ!」
「チャンヒョク、離せって」
仲間たちが彼の腕にしがみついて、引き剥がそうてしても、チャンヒョクは何度もシノンに掴みかかった。
「おかしいってなんだよ。
そんなこと言うんじゃねーよ!!!」
チャンヒョクのどなり声は廊下を突き抜けた。騒ぎを聞いて康介までも部屋から出ていき、野次馬の向こうからチャンヒョクを見ていた。一瞬だけチャンヒョクと目が合った。康介はすぐに目をそらして、部屋に戻ってしまった。
またも、チャンヒョクに罰則が与えられた。
彼自身も、咎められようと、何が彼を刺激したのか分かっていなかった。
真夜中のグラウンドを3時間走らされ、やがて監視役の先輩たちも部屋に戻っていった。チャンヒョクはさぼらずに走っていたが、スタミナに自信がない彼は暗闇にまぎれて休み休みだった。
ようやく三時間が終わり、昇降口に倒れ込んだ。シャツが汗で体に冷たく張り付く。喉は張り裂けそうな痛みが押し寄せている。
仰向けになって深呼吸を繰り返している彼の視界に、康介の顔が見えた。
「よお」
初めは幻覚だと思った。だが、たしかに康介がいる。康介はすぐに立ち去ろうとしたが、「待てよ」と叫んだ。
「座れって」
嗄れた声しか出ない。康介は足を止めたが、振り向かない。
「お願い!飴あげるから」
ダメ元でいうと、なぜか康介はこっちに向かってくる。
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