第一話「彼等」

14/18
前へ
/443ページ
次へ
康介の部屋の前で立ち止まる。 ノックする手前で躊躇い、やはり叩こう、いややめようを繰り返した。 5分も躊躇った結果、ノックすることに決めた。 だが応答がない。 中からテレビの音が聞こえる。 康介も軍舎にいるはずなのに。 「おい。俺だ。いるんだろ」 ノックを続けても反応がない。 苛ついたチャンヒョクは勢いよくドアを蹴破った。ドアは口金から外れて、そのまま倒れた。タンスを薙ぎ倒して、寝台にいた康介を起こした。 ぼんやりしている康介はゆっくり立ち上がって、ドアのほうに来た。 「お前、何して…」 チャンヒョクは康介の声を遮って、彼の胸ぐらを掴んで部屋から引きずり出した。 「何すんだよ」 チャンヒョクは昇降口まで連れて行くと、自分のオンボロのバイクの後ろを指差した。 「は?」 「乗れって言ってんだ!!!」 いきなり怒鳴られると、康介でもうろたえた。言われるがままに後ろに跨ると、チャンヒョクはバイクを発進させた。 威勢とは裏腹に、スピードは出ない。
/443ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加