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チャンヒョクが康介を連れてきた場所は、子供の声が聞こえる道場の前だった。門こそ閉ざされている。
「ここはオレの実家だ」
「…は?」
康介は突然のことに聞き返した。チャンヒョクは門の方を見ている。
「俺は確かにここの次男だ。
ここで生まれて、ここで育った。
でもなぁ…ここには入れない。
入れないんじゃない…。
入らないんだ。」
康介は話が理解できずに、チャンヒョクをじっと見ていた。いつもふざけてばかりのチャンヒョクが初めて見せた顔だった。
本当は繊細で、傷つきやすい。
悲しくて仕方ない時がある。
でも気丈に振る舞わないと、自分でいられなくなる。
みんなの描く「俺」でいられない。
「意味ないじゃんか。
家族がいたって…
生んでくれたって…
愛してくれなきゃ意味ないじゃんなぁ」
チャンヒョクの顔がほんのり赤くなり、目元から涙が溢れ出した。康介は面食らっていた。
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