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そうこうしているうちに、門の向こう側では子どもたちが「ありがとうございました」と挨拶している。
「気をつけて帰るんよ」
この声はチャンヒョクの母の声だった。チャンヒョクは胸が苦しくなった。
涙と噎せ返る呼吸で、息が出来ない。肩を上下にゆする程に彼は激しく泣いていた。
その時、腿の横にぶら下がっていた非力な手を、冷たい手が掴んだ。
康介の手だった。
康介はチャンヒョクを引っ張り、バイクの方に向かっていく。
「お前…ここにいたら、おかしくなるぞ。」
見ていられなかった。康介はチャンヒョクの苦しそうな顔を見て、居ても立っても居られなかった。こんなことは初めてだ。
被験者を終えてから、初めて情を知った。
「………」
「俺が逃がす。お前をここから逃がす。」
康介はハンドルを握り、チャンヒョクをのせて走り出した。
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