第一話「彼等」

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そうこうしているうちに、門の向こう側では子どもたちが「ありがとうございました」と挨拶している。 「気をつけて帰るんよ」 この声はチャンヒョクの母の声だった。チャンヒョクは胸が苦しくなった。 涙と噎せ返る呼吸で、息が出来ない。肩を上下にゆする程に彼は激しく泣いていた。 その時、腿の横にぶら下がっていた非力な手を、冷たい手が掴んだ。 康介の手だった。 康介はチャンヒョクを引っ張り、バイクの方に向かっていく。 「お前…ここにいたら、おかしくなるぞ。」 見ていられなかった。康介はチャンヒョクの苦しそうな顔を見て、居ても立っても居られなかった。こんなことは初めてだ。 被験者を終えてから、初めて情を知った。 「………」 「俺が逃がす。お前をここから逃がす。」 康介はハンドルを握り、チャンヒョクをのせて走り出した。
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