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…
飯屋にたどり着いてから、康介はコース料理をたらふく食べている。その向かい側では、いつまでもチャンヒョクが泣いていた。
「お前、泣いてるヤツの目の前でよく食えるな」
湿って小さくなったティッシュで目元を抑えながらチャンヒョクは呟いた。
「しかも、どんだけ食うんだよ」
どんどん積み上がる皿。底なしのように食べる康介は、見ていて新鮮だった。康介の見た目と反して、意外な部分だった。
飯屋を出てから、夜の繁華街をバイクを押して歩いた。二人の影が長く伸びている。道端では泥酔している男が、女に背中をさすられている。
どうしようもないヤツばかりが、この町をうろついている。
「康介の親って何してんの」
チャンヒョクが聞く。
「親はいない。生まれてすぐにすてられた。」
「どこに」
「遊園地のコインロッカーだ」
「けっ。ろくでもないな」
「でも…見つかったからツイてんだろうな」
チャンヒョクも改めて考える素振りをして「そうだな」と頷いた。
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