第一話「彼等」

1/18
前へ
/443ページ
次へ

第一話「彼等」

怖くて目を瞑った。 すぐには何も起きなかった。 康介には、その不思議な「虚無」の時間があった。 ゆっくり目を開けば、ガラス玉がスローモーションで分解するように、空気にヒビが生えてみえた。 空気は気体のはず。 なのに、ガラス玉のような固体になって、彼の目の前に浮かび上がる。 そして束の間。 自分の体が、別の体のもののように感じた。 第三者の視点から自分の体を見ている。 浮き上がる体。 炎に包まれる体。 ……これで死ねる。
/443ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加