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第一話「彼等」
怖くて目を瞑った。
すぐには何も起きなかった。
康介には、その不思議な「虚無」の時間があった。
ゆっくり目を開けば、ガラス玉がスローモーションで分解するように、空気にヒビが生えてみえた。
空気は気体のはず。
なのに、ガラス玉のような固体になって、彼の目の前に浮かび上がる。
そして束の間。
自分の体が、別の体のもののように感じた。
第三者の視点から自分の体を見ている。
浮き上がる体。
炎に包まれる体。
……これで死ねる。
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