23人が本棚に入れています
本棚に追加
あの意識は今でも脳裏に焼き付いている。
頭の中で何度も自分を殺した時限爆弾。
今も解除できないでいる。
なぜ死に損なったんだろう。
「おい、聞いてんのかよ」
いきなり額を小突かれて、康介はハッとした。
忘れていたー。
自分がどこにいて、誰と向き合っていて、
いま、何をされているのか。
「お前が来る場所じゃねーんだよ。」
そんなの知ってる。
「分かってるなら、異動願を出して
歩兵師団に戻るんだな。」
「………」
「お前は被験者だから、
優遇されるだろうよ」
康介は爆弾処理班に異動した初日、荷物を部屋に運んでいる最中に
先輩に捕まっていた。
歩兵師団時代からこんな待遇を受けてきた。だから慣れっこだ。
(どいつもこいつも…俺のこと被験者呼ばわり)
腸は煮えくり返りそうだが、この程度の相手に楯突くのも嫌気が差す。
黙って話は聞いてやるが、余計なことを口走ったら 殺してしまおう。
「聞いたぜ。
被験者は洗脳されてるってな。
もう脳みそがイカれて…」
その言葉が康介の琴線に触れた。拳を腿の横でギュッと握りしめた時だった。
「誰だ!そこにいるのは」
相手が突然、康介の背後に声をかけた。まったく気配を感じなかった。
最初のコメントを投稿しよう!