第一話「彼等」

2/18
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/370ページ
あの意識は今でも脳裏に焼き付いている。 頭の中で何度も自分を殺した時限爆弾。 今も解除できないでいる。 なぜ死に損なったんだろう。 「おい、聞いてんのかよ」 いきなり額を小突かれて、康介はハッとした。 忘れていたー。 自分がどこにいて、誰と向き合っていて、 いま、何をされているのか。 「お前が来る場所じゃねーんだよ。」 そんなの知ってる。 「分かってるなら、異動願を出して 歩兵師団(古巣)に戻るんだな。」 「………」 「お前はだから、 優遇されるだろうよ」 康介は爆弾処理班に異動した初日、荷物を部屋に運んでいる最中に 先輩に捕まっていた。 歩兵師団時代からこんな待遇を受けてきた。だから慣れっこだ。 (どいつもこいつも…俺のこと被験者呼ばわり) 腸は煮えくり返りそうだが、この程度の相手に楯突くのも嫌気が差す。 黙って話は聞いてやるが、を口走ったら 殺してしまおう。 「聞いたぜ。 被験者は洗脳されてるってな。 もう脳みそが…」 その言葉が康介の琴線に触れた。拳を腿の横でギュッと握りしめた時だった。 「誰だ!そこにいるのは」 相手が突然、康介の背後に声をかけた。まったく気配を感じなかった。
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!