第二十五話「秤」

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雨の中、傘もささずに歩いていく。 そんな康介の姿を、渡り廊下の窓からガヨンが見ていた。昇降口まで行くと、傘を持って康介を追いかけるように向かう。 泥濘に足を突っ込んでも構わずに、康介は火薬庫に戻ってきた。フェンスを開け放し、火薬庫の鍵穴に鍵を差し込んだとき。フェンスの軋む音が耳に刺さった。 康介はゆっくり振り向いた。 フェンスの開いた隙間から、子猫が2匹入ってきただけだった。子猫は康介の視線に驚いて、踵を返してしまった。 「本当に…どうかしてる」 呟いたあとに火薬庫の中に入った。 鍵を閉め、電気をつける。 作業台の上に不発弾の箱が置かれていた。 置きっぱなしにしたのだろうか。 その時は何も気にせずにいたが、箱の中を見た瞬間に息が詰まるような感じを覚えた。28個の不発弾の中に1個足りない…。 作業台や空き地を探し回っているうちに、雨は止んだ。それから作業台に戻っていくと、苛立ちで椅子を思い切り蹴飛ばした。 (ガヨンは邪悪。 俺にとって…消さなくてはいけない。) 鍵を探すためにポケットに手を入れたとき、なくたったと勘違いしていたM-12に触れた。 ポケットに入れたことをすっかり忘れていたのだ。それと同時に左手に握られた拳銃を、慌てて床に落とした。  猜疑心に押しつぶされそうになっている。そんな自分をコントロール出来ないことが苦しい。興味を持たれること、噂をされること。すべて嫌だ。 (なんで独りにしてくれないんだ…?) 康介はその場で座り込んだ。
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