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「あ…すんませーん。」
場に似つかないわざとらしい声がする。とんだお調子者が野次馬していると思ったが。
「お前、どこの誰だ?新人か?」
「あ?」
そのふざけた声に怒気が混じった。
「テメェが先に名乗れよ。」
声はそう続けた。ハッとした時、先輩は男を殴ろうと康介を横切ろうとした。康介は右足を真横に滑らせ、先輩の足を引っ掛けてやった。
意図も簡単に先輩は尻もちをつき、現状を把握するまでの間にみるみる顔が赤くなった。
「テメェ…!」
康介は我に返って、先輩に手のひらを差し出した。
「チッ……!出てけ、化け物!」
捨て台詞をいって、手を振り払った。
先輩はそのまま廊下の向こうへ走り去っていった。
「ははは」
さっきアレほど怒気があった声はすぐに笑い声に変わった。
康介がようやく振り向くと、そこにはノッポでひょろっと細い男が体を曲げて笑っている。康介は相手に感心を示さず、となりを横切って階段を降りていく。
まもなく顔合わせが始まるからだ。
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