第一話「彼等」

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「あ…すんませーん。」 場に似つかないわざとらしい声がする。とんだお調子者が野次馬していると思ったが。 「お前、どこの誰だ?新人か?」 「あ?」 そのふざけた声に怒気が混じった。 「テメェが先に名乗れよ。」 声はそう続けた。ハッとした時、先輩は男を殴ろうと康介を横切ろうとした。康介は右足を真横に滑らせ、先輩の足を引っ掛けてやった。 意図も簡単に先輩は尻もちをつき、現状を把握するまでの間にみるみる顔が赤くなった。 「テメェ…!」 康介は我に返って、先輩に手のひらを差し出した。 「チッ……!出てけ、化け物!」 捨て台詞をいって、手を振り払った。 先輩はそのまま廊下の向こうへ走り去っていった。 「ははは」 さっきアレほど怒気があった声はすぐに笑い声に変わった。 康介がようやく振り向くと、そこにはノッポでひょろっと細い男が体を曲げて笑っている。康介は相手に感心を示さず、となりを横切って階段を降りていく。 まもなく顔合わせが始まるからだ。
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