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「あ…おい、待てよ〜」
ノッポはすぐについてきた。となりに並んで階段を降りている。
「なあ、いくつ?」
「あ?」
「歳だよ。ババアじゃねーんだから、歳聞かれて
嫌な顔すんなよ。」
この手の話し方をするヤツは今までいない。周囲にはいたかもしれないが、明るい人間が話しかけてくることはなかった。
「19」
「お!一緒。同い歳。イェーイ」
なぜか男はノリノリで手のひらを出してくる。謎のハイタッチには応じなかった。諦めが早いのか、舌打ちしながらも、すぐに手を引っ込める。
「俺、チャンヒョクってんだ。」
「……」
「名乗れよ」
「…康介」
「コウスケ…?
お前、日本人か」
チャンヒョクの言葉に足を止めた。日本人なら、被験者の一人しかいない。顔を見たことがない隊員なら沢山いるだろう。康介自身も、チャンヒョクを見たことがない。
歩兵師団は1000人を越す軍隊である。知らない顔があってもおかしくない。なかでも、康介は有名な方だったが、チャンヒョクはピンと来ていない。
正体を知られることに、体が拒絶した。
「日本人なんか、いるんだな〜。
俺、初めて聞いたぜ」
チャンヒョクの言葉に耳を疑った。
康介の顔を知らなくとも、日本人あるいは名前を聞いただけで距離をとってきたのに。
「お前、わざとやってんのか」
康介は睨みをきかせて、チャンヒョクに聞いた。しらけた顔をしていた康介の目つきが鋭くなると、チャンヒョクは狼狽した。
「なんだよ、わざとって。
仲良くしようって言ってんだろ」
「集合ー!!」
その時、外の方から部隊長の号令がかかった。康介はそれきり、チャンヒョクを放置して外へ駆け出していった。
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