第一話「彼等」

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「あ…おい、待てよ〜」 ノッポはすぐについてきた。となりに並んで階段を降りている。 「なあ、いくつ?」 「あ?」 「歳だよ。ババアじゃねーんだから、歳聞かれて 嫌な顔すんなよ。」 この手の話し方をするヤツは今までいない。周囲にはいたかもしれないが、明るい人間が話しかけてくることはなかった。 「19」 「お!一緒。同い歳。イェーイ」 なぜか男はノリノリで手のひらを出してくる。謎のハイタッチには応じなかった。諦めが早いのか、舌打ちしながらも、すぐに手を引っ込める。 「俺、チャンヒョクってんだ。」 「……」 「名乗れよ」 「…康介」 「コウスケ…? お前、日本人か」 チャンヒョクの言葉に足を止めた。日本人なら、被験者の一人しかいない。顔を見たことがない隊員なら沢山いるだろう。康介自身も、チャンヒョクを見たことがない。 歩兵師団は1000人を越す軍隊である。知らない顔があってもおかしくない。なかでも、康介は有名な方だったが、チャンヒョクはピンと来ていない。 正体を知られることに、体が拒絶した。 「日本人なんか、いるんだな〜。 俺、初めて聞いたぜ」 チャンヒョクの言葉に耳を疑った。 康介の顔を知らなくとも、日本人あるいは名前を聞いただけで距離をとってきたのに。 「お前、わざとやってんのか」 康介は睨みをきかせて、チャンヒョクに聞いた。しらけた顔をしていた康介の目つきが鋭くなると、チャンヒョクは狼狽した。 「なんだよ、わざとって。 仲良くしようって言ってんだろ」 「集合ー!!」 その時、外の方から部隊長の号令がかかった。康介はそれきり、チャンヒョクを放置して外へ駆け出していった。
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