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今年、歩兵師団や別部隊から引き抜かれた新人は10人。他の部隊に比べて、爆弾処理班は地味な存在だ。康介自身も、こんな部隊があるとは知らなかったし、軍舎にしても旧館など場所すら分からなかった。
旧館は、歩兵師団時代に軍舎だった本館から5km離れた辺鄙な場所にある。その旧館の道路をはさんだ向かい側に、軍楽隊の練習場があった。
旧館には他に偵察隊が軍舎として利用しているが、北棟と南棟に分かれているために、全く会うことがないらしい。
横一列に並んだ新人たちはお互いの顔を見合い、やはり康介を見るとひどく怯えたり、邪険にした。
チャンヒョクは首を伸ばして、康介をジロジロ見ている。なぜ怒られたのか分からないからだ。
「おい、そこ!」
よそ見がバレて、隊長にいきなり怒鳴られた。体格は186cmの高身長なだけに、隊長を見下ろす形になる。
「俺の言ったことを話してみろ」
「…………」
相手の声音から怒りを感じ取ったチャンヒョクも生唾を飲み込んだ。
「14時から二階フロアで爆弾の……なんちゃら…」
つられたように同じ新人が笑い出すと、隊長の怒りの矛先が笑った新人に向けられた。
説教が6分割されて減ったチャンヒョクは恐怖すら感じなかった。
解散したあとに、一緒に怒られた仲間たちが話しかけてきて、あっという間に友達になった。
(そうそう。
俺って、フレンドリーだからね。
誰かさんと違ってな)
康介はそそくさと自分の部屋に戻ってしまった。目で追っていると、ツリ目が特徴のホヨルが声をかけてきた。
「なあ、チャンヒョク。
さっきアイツといなかった?」
「ああ、康介?うん。」
「やめとけよ。アイツ、頭おかしいんだぜ」
「頭がおかしい?」
「そう。例の被験者だよ。知らないのか」
その話になると、和気あいあいとしていた仲間たちの空気が一変した。
「アイツ、やっぱり簡単に人を殺しちゃうのかな」
「殺人兵器なんだろ。見境なしじゃないの」
「俺達も殺られるかもな」
チャンヒョクは彼らの話が一体だれのことなのか分からなかった。
「だれの話だ?」
「だから!比留間康介だよ。さっき話したろ」
ホヨルが立ち去る康介の背中に指差した。
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