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康介はすぐに気づいて、振り下ろされる柄を避けた。それからチャンヒョクのがら空きになった下腹部に手のひらを押し込んだ。
ズドンと腹に何か食い込んだような威力を感じた。錯覚に過ぎないが、穴が開いたんじゃないかと思った。
チャンヒョクの大きな身体が後ろへ仰け反り、それでも後ろ足で踏ん張ったために立っていた。
「お前、うざいよ」
康介は手首を回しながら吐き捨てた。
「浮いてるヤツに話しかけて
目立とうとしたんだろ。
お前みたいなヤツは、歩兵師団に幾らでもいた。
そういうヤツは早死するんだ。」
「あのなぁ…」
チャンヒョクは腹をおさえながら、声を詰まらせた。真っ向から「うざい」と言われたことがないから、ショックを受けたのだ。
「お前がなんだってんだよ。
ちっぽけな人間だろうが」
「は?」
「オレもお前も同じだろうが!
目は2つ、鼻は一つ、口は一つ、髪の毛…ふさふさ?
あと…なんだ。腕か!
腕が二本、足が二本。
あとなんだ?なんだってんだよ!」
一人で喋って興奮しているチャンヒョクの話を康介は黙って聞いていた。
「オレとお前は同じなの!!
……避けられてることもな。
何も知らないくせに、変人扱い…
くそ。」
最後はチャンヒョクが頭をもたげて、去っていった。
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