鬼多見奇譚余話 梵天丸の日常

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 (われ)は梵天丸、柴犬である。職業モフモフ。  現在、朝六時。布団から抜け出し、隣で寝ている(あるじ)の顔をおすわりをして見守る。 「ん……どうした? トイレか?」 「ウ~ッ、ニャン!」 「わかったわかった」  主も身体を起こす。我はうれしくて前足で地団駄を踏んだ。 「よしよし」  取りあえず我の頭をなでて、次ぎに首の周りをモフモフしてからトイレに連れていってくれる。  部屋を出て、階段を降りて集合住宅の前に来た。ここは『マンモス団地』と呼ばれていたところらしい。五階建てや二階建ての集合住宅が幾つもある。ちなみに我が主の住まいは五階建ての四階だ。  さて、用を足すのにちょうど良い電柱を探していると、気になる人物に目が行った。我はよくこういうモノを視る、もうこの世界には存在しない人間だ。その老女は団地内のメインストリートを歩いていた。 「ほうっておけ、記憶がこの場所に染みついているだけで害はない」  主にも彼女が視えているのだ。そして我も主と同じ考えだった。
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