鬼多見奇譚余話 梵天丸の日常

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 (あるじ)も出て行き、我は独り部屋に取り残された。だが、すぐにドアが開いて男性が入ってくる。主の義兄(ぎけい)だ。 「梵天丸」  我は義兄殿に駆け寄る。 「よしよし」  そう言いながら義兄殿はポケットから乾燥ささみを取り出した。 「みんなには内緒だぞ」  いつもこう言って義兄殿は我にささみをくれる。我はこれが大好物なのだ、無心で咀嚼(そしゃく)する。 「じゃあ、行ってきます」  我は名残惜しげに見送った。
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