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特にやることもないので部屋で寝いると、またドアが開く音がした。時刻は昼を過ぎてる。その気配から我は主の姉君が入ってきたことを察し、全力で玄関に向かう。
「梵天丸、お昼よ」
姉君が持ってくるのはドッグフードではなく『飯』だ。仏壇に供えたご飯を持ってきてくれる。我はドッグフードよりご飯のほうが好きだ。だが、主はグルテンがどうのと言ってあまり食べさせてはくれない。
「はい、お食べ」
ぬるま湯でほぐしたご飯を、姉君は差し出してくれた。我は瞬く間に平らげる。
「それじゃ、お留守番してなさい……」
と、我の頭をなでた。
我はジーっと姉君を見つめる。それに気付いた姉君も見つめ返す。
「悠輝……」
姉君は我を抱き上げて部屋を出た。
我に主の過去の姿を見たのだ。詳しくは知らぬのだが、何か主に対し負い目があるのだろう。我が見つめていると、いつも連れて行かれる。
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