火山の恩恵

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 クエンはランドールに付かず離れずの距離を保って、ランドールが集落に入ればその近くで野宿をしていた。  テレビシアはすっかり冬で一面雪景色だった。クエンは小さなカマクラを作って風除けにして厚手の外套を着ていたが、寒さで少しも眠ることが出来なかった。  急に手首に巻いた赤い呪縛紐が締め付けてくる。ランドールに気付かれるほどに近いた知らせであるが、いつものそれとは違い黒い幻蝶が現れたので嫌な予感がして、紐が導くままに町に入った。  囲いのされていない小さな町だったが、ぐるりと積み上がった雪が城壁のようであった。  宿の主人に声をかけることもせず突き進み、扉を開くと全裸で寝台に横たわるランドールと真っ赤な髪のアルフがいた。  クエンは驚いて剣の柄に手をかけた。  アルフは振り返って穏やかに笑った。 「大丈夫だよ。すっかり大人のこの子に対して、クロードやお前みたいな欲求はないから」  これまであまり交流はないが、このアルフという男が、師匠クロードの、その想い人以上の関係にあることはわかっていた。だが、その得体の知れないところに不誠実さを感じて好かない。  上級魔術師を常に傍に置き、ランドールを魔の道に踏み込ませたきっかけを作ったのもこの男のはずだ。  全ての者が自分の思い通りに回っていると思っているようなこの男に、クロードの己の弟子に対する情を理解できるとも思えなかった。 「クロード様と俺の気持ちは意味が違う」 「そうかい? あの子は君のことだって食べてみたいと思ってるはずだけどね」  柔らかいが卑屈な声色で笑う。 「嫉妬深くて疑り深いのは嫌われるぞ」 「おや、真面目一辺倒で、抱きしめもできないのはもっと嫌われると思うが?」  優しそうに穏やかに振る舞っているくせに物言いはいちいち腹の立つ男である。  アルフを睨みつけ、それからチラリとランドールの方をみる。 「ちょうど良いところに来たな」  いつのまにかランドールの寝台にダァンワームがいた。
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