温泉街にて

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 黙り込み顔の赤いランドールに熱が出てきたのかもしれないと思った。 「熱は?」  額に触れようと手を伸ばす。 「いっ」  突然、小指の下に噛みつかれた。手を引っ込めようとしたが、一呼吸して口を引き結び、腕を伸ばす。  自身の気の流れを意識して、噛まれてにじみ出る血に魔力を乗せる。  一気に力を与えようと意識したので、肘まで痺れるような痛みが走る。  ランドールは慌てて口を離した。 「ごめ、ごめん! あー!なにやってんだ僕は」  ランドールが歯型に指を当てる、あっという間に傷は消えた。その行動に少しムッとする。 「せっかくあげたのに、こんな小さな傷治すのに使うことない」 「十分だよ。なんだよ。お前、魔力の乗せ方、知ってるのかよ?」 「夢魔が教えてくれた」  ランドールの顔がさらに赤くなる。クエンにはランドールが何をそんなに戸惑っているのか理解できなかった。 「僕が寝てる時もこうしたのか?」 「口移しだ」 「え? 口、を合わせたのか?」 「蘇生法と同じだ。お前は気絶していてまるで息が止まっているかと思うくらいだったしな」  ランドールは苦笑いした。 「こ、今後貰う時は、…今みたいにどこからか血を吸わせて貰う…でも良いかな? 噛み痕を治すくらいは大した力使わないし」  沿海州育ちで奔放なランドールが自分に対しては性的な要求をしないと決めているのだと思うと切ない。自分がエスメラルダ人だから遠慮されているのだろう。遊びでもいい。ランドールのためになるなら契りを交わさずに触れ合ってもいい。この点についてはエスメラルダ人の常識には囚われまいと思っているのをわかって欲しい。 「お前が気にならないやり方でいい。自分の回復の仕方も含めて一通り教わっているから気兼ねするなよ」 「一通り…」  またランドールの顔が赤くなる。  血をすするための傷を負わせることに気兼ねがあるのか、他の方法を思いつくまでの限定のやり方だと念をおすランドールに、クエンは苦笑いする。  この話は一旦終わりとばかりにランドールはクエンを寝台から追い出そうと肩を押した。  
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