温泉街にて

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 クエンが精力を注ぎ込む前にランドールは3回意識を飛ばしかけた。  クエンが一度達して、軽く口付けをしているうちに、ついにランドールの身体が反応をみせる。  腹に当たるそれを感じて、クエンは嬉しくなって満足そうに身体を擦り付けた。ランドールもそれに応じながら鼻を鳴らし、唇を離した。 「クエン、お前の口付けだけで僕、イキそうだよ」  そう言ってさらに貪り合ううちにランドールはクエンの腹に白い液体をぶちまけた。 「ああ、クッソ。気持ちいい。忘れてたよこの射精する感覚…でも参ったな。お前に奥を突かれてイク方がヤバいんだけど」  そう打ち明けてランドールは少し後悔することになる。クエンは容赦なく身体を捩じ込んできて、ランドールは散々泣き喚いて、もう2回、最後は内と外と両方の絶頂を味わった。  魔力も精力もだいぶ注ぎ込んで、クエンの方は2回で打ち止めだったが、満足してランドールの側に仰向けになった。  ランドールはクエンの肩に頭を乗せて擦り寄ってきた。肌が触れ合う温もりがまた嬉しい。 「お前、この傷…」  クエンの両腕にまだ真新しい傷を見つけてランドールが咎めるように顔を顰めた。  火山で呪縛紐を引きちぎった時の痕だ。 「治さなくていい。もう塞がってる。無駄遣いするな」 「…お前からもらえるったって…無限じゃないもんな」  またクエンの胸に頭を下ろして、クエンの腕をさすり、胸に手を滑らせた。 「お前も初めて、だよな? 初めてでこんなにイカされるとは思わなかった」  そう呟かれて首を傾げる。 「夢魔に手解き受けた」  あれがクエンにとっては初体験だったと言って良いだろう。 「なんだよ。はじめては僕だけか」 「本当なのか?」  黒く染めた艶やかな髪に唇をつける。  クエンの心を乱す妖艶な言動をするこの男が未経験などということがあり得るのだろうか。 「経験豊富なようにみせかけてただけさ」  ランドールは船乗りの下働き時代からエスメラルダの都までの旅路では虫が密かに身代わりになっていたこと、魔術を覚えてからは精力を使い切っていたこともあり、誘惑して床に誘っては魔術などを駆使して相手を満足させていたことを語った。
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