火山の恩恵

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 大きな赤と黒の縞模様の芋虫が青い目玉をギロっと一回転させた。 「これから夢魔を呼び出して治療をするところなんだよ」 「夢魔? 治療?」 「死にかけているんだ」  その言い方はいつもの不遜な虫のものとは違っていた。  それでクエンはこれは只事ではなさそうだと悟った。  ふらふらと、アルフに肩が掠めたのも気にもせず、ランドールの枕元に跪く。 「冷たい…」  額に触れて、慌てて手を離した。  ランドールを失う。そう思うと様々な後悔が渦巻いた。なぜ死にかけているのかわからないが、どうせ死ぬのならなぜこの前この手で斬らなかったのか。 「本来、魂は肉体が壊れてから形をなさなくなるものだが、今、ランドールは魂が先に壊れて体から抜け出してしまいそうなのだよ。この小刀がそれを防いでくれているが早く治してやらねばならない」  ランドールの胸元には鎖で首にかけたとても小さな小刀があった。 「治療は?」 「魂の治療には人1人死なせるくらいの魔力を与えなければならないが、ランドールは夢魔と縁を持っている。夢魔の力を借りれば普通の魔力が何倍もの力になる」  虫はよちよちとサイドテーブルまで這ってゆき、蓮台の形をした陶製のような銀縁の器を目で示した。 「君はなぜランドールに気づかれない距離を保ってついてくる?」 「会えば…殺せと言うから…」 「死なせたくないなら服を全部脱いでランドールの左側に横になれ」  芋虫の言葉に目を見開いて、抗議しようとしたが言葉にならなかった。  ランドールを失いたくない。自分に出来ることはなんでもしたい。  だが、虫の言うことが必要なことだとも、違うともわからなかった。 「修復するのに君の魔力を使うんだよ。体の穴という穴から汗のように出てくるそれは服を着ていると布地に染み込んでしまっていけない。だから裸になって、ランドールになるべくくっつくんだ」 「君が嫌なら私がやるよ。君が来ていなければ私がこれからそうする予定だったんだからね」  アルフがにこやかに上着を脱ごうとしたので、クエンは背嚢と剣を寝台の下に押し込んで、外套を脱いだ。 「それで良い。君は…ランドールを邪険にしていなかったか?」 「もう大人なのに…少年のままの言動をするから…困るんです」
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