火山の恩恵

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 そこからさらに萌をみせていなかったクエンのモノへと伸びてゆき、鼓動のリズムで締めたり緩めたりを繰り返した。  欲望が激ってきて、ランドールを、思った。  ランドールに対する想いをはっきりと自覚した。ランドールが欲しい。  妖魔の薄紅色の髪が金色に代わり、ランドールにみえてくる。  鈴の鳴るような夢魔の声が魔力の乗せ方を指南してきて、今にも狂おしい噴火しそうな自分のそこに気を集中させた。  夢の中のこと。本当の肉体ではない。  そう思っても罪悪感が込み上げる。背徳感に苛まれながら、ランドールの顔をした妖魔の身体に自分を幾度となく打ちつけた。  最初の何回かは快感の伴う放出だったが、最後の何回かは苦痛しかなかった。それでもクエンは続けた。  そのうち力尽きて夢魔の白い臍のない腹に頬を押し付けるように脱力した。 (まだ完治していない。だが、完全な力を取り戻せば彼は死ぬ運命だ。どうする) 「完治するとどうなるのですか?」 (力を欲するものの餌食になる。魔術師然り、魔術師を欲するものも然り。ほら、そこにも虎視眈々と控えているじゃないか…)  クエンはアルフの顔を思い浮かべた。 「不完全でも平気なのですか? 例えば俺がずっと側にいて必要な時には力を分けてやれたら?」 (もう少しお前の力を貰おう。あと少し修復する。その前に、魔力の回復の仕方を教えよう)  夢魔は大地や木々から気脈を乱さずに魔力の回復に必要な気を取り出すやり方を教えてくれた。イメージで伝えられたそれは莫大であったが、クエンの中にしっかりと残った。  それで少し回復してまた夢魔の身体にのしかかった。 (お前の限界まで力を貰うから、後は自分で回復しなさいな)  その形は交わりだが、実際には淫魔に精力を吸い取られているだけで、放出の快感は途切れることなく、クエンは力が奪われて干からびていくような渇きと、血脈全てが股間から引き抜かれて行くような痛みを感じていた。  クエンは絶頂か痛みかわけがわからないうちに意識を手放した。 「酷い味だ」  口に流れ込んだ苦味に咽せて目を覚ますと、部屋の形と調度品の左右が入れ替わっていた。 「気付薬だ。よほど酷い味なんだな」  枕元に赤い髪のアルフが愉快そうに微笑んでいる。
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