04 悪役令嬢ファミリー

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 夫人はそういって涙をこぼし始めるけど、落ち着かないのは私だ。まだラーシュの手首を掴んでいたことに気づき慌てて離すけれど、そこにある温度は変わらない。 「ごめんなさい」 「貴女に謝らせてしまうなんて母親失格だわ。貴女を王都から出してしまう情けない母親でごめんなさい」  また夫人のヒロインモードが始まった。いつもは適当に相槌を打ってやり過ごすが、今日は一刻も早く出ていってほしい。 「申し訳ありません。今日は調子が優れず休みたいのですが」 「まあ! どうしたの、顔をよく見せて」  まずい、夫人が近づいてくる。彼女の足音に気付いたラーシュがさらに身を近づけてくるのがわかって私の心臓は跳ねた。 「だ、大丈夫です! 眠いだけなので!  ……そうだ、明日は一緒にドレスをみませんか。そのためにも今日は休みます」  私の提案に、泣いていた夫人はくるりと表情を変えて少女のように微笑む。 「一緒に見てくれるのね? じゃあ楽しみにしているわね」  辺境地で着る用のドレスを新しく仕立てると連日夫人はうるさかった。辺境地できらびやかなドレスなど何の意味もなさないのに。  先程まで私を心配していたことが嘘のように夫人は機嫌よく部屋から出ていった。 「ラーシュ、もういいわよ」  小声で布団の中のラーシュに声を掛けると、真っ赤な顔をしたラーシュが這い出てきた。 「ごめん、苦しかったでしょ」 「そうだね。色んな意味で」  ラーシュは這い出ると私の隣にそのまま見下ろす。ラーシュといると安心するのに、こうして間近で見下されるとどこか緊張してしまう。  何か話さなくてはと思うけど言葉が出てこず、無言で見つめ合う形になってしまった。 「……また明日も来るよ」  ラーシュの顔はまだ赤い。でもきっと私の顔だってそうだ。  こんな状況にならなければ、仲のいい頼れるクラスメイトのままだったかもしれない。  ラーシュがいなくなったベッドは寂しく思えた。
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