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ノーザ大陸(途中から視点が変わります。)
ガタン・・・。大きな揺れが一回。
そのまま、動かなく成った事で、フィガロは目を覚ました。
・・・? なんだ、どっかの村か街にでも着いたのかな・・・。って、寒っ!!
寝床にしていた布を、咥えて引っ張り身体をさらに丸めて布にくるまる。しばらくすると、荷台に何か積まれる。フィガロがいる隅の方にも、まだ何か積んだようでさっきまで感じていた寒さが少し和らいだきがした。
寒さが和らいだ事と、また馬車が揺れだした事で、フィガロはまた眠りについていた。
元々、獣化すると本能が強く成る為、猫化したフィガロは一日の大半を寝て過ごすのは苦では無かった。途中腹が減ったが、積荷から零れていた麦を少し齧っては、また眠りに付いていた。
だから、いつの間にかフィガロは自分が置かれている状況が変化しているのに気が付かなかったのだった。
んにゃ・・
なんだか、暖かい。それにふかふかする・・・。
フニフニ
思わず、前足でふみふみとするが、感触が無い。
ん~。なんでぇ・・・
ひくひくと鼻を動かせば、いい匂いがする・・・。
ゴロゴロと喉が成る。
聞き慣れない音や空気、近くから聞こえる声に、フィガロの意識は段々とはっきりしてきたのだった。
「あ、起きた!」
!!!!!!!
しびびっびっと、急に目の前に、現れた金と碧の瞳にフィガロの尾が太くなる。
じたばたと暴れるが、フィガロは思う様に身動きが出来なかった。
え???!なに、どうして・・・?!
「こら、暴れるなって!」
ギュッと、身体を押し付けられた先から、トクトクと聞こえた音に、恐怖に興奮した気持ちが少しづつ、落ち着いてきた。
・・・暖かい。
「お前、魔獣の子か~? あれか、東の方で流行ってたペット魔獣か?」
!? え?? ま、魔獣?! 違う!!!!!
そう咄嗟に否定しようと思ったフィガロだったが。さっきまで住んでいた、イースは黒猫の自分よりも、ペット魔獣の方が可愛がられてた事を思い出す。
ここはイースとは、違うとは思いつつも、フィガロは獣化したまま、大人しく周りの様子を伺う事にした。
「お、大人しく成った。いい子だな。」
そう言って、フィガロの頭が撫でられる。
ちょ!!首もげるって!!
グリグリされ、首がガクガクするのを前足で抑えると、少し力が弱まった。
「ああ、ゴメン。強かったかな?これならどう?」
ゴロゴロ
「ふふ、お前可愛いな。・・・よし!お前は、今日からうちの子だ!」
ゴロゴロ・・・ゴロッ?!
ふなぁ?!
「家籠りも、一人じゃ飽きちゃうしお前の世話してたら、あっという間に過ぎそうだな。」
・・・家籠り?! な、何それ?!
改めてキョロキョロと、周りを見ると所々に白いモノが積まれていた。
建物も、フィガロ達の住んでいた様な形とは違い、横に広く三角に尖った屋根や、斜めに成っている屋根をした形ばかりだった。なにより、寒い。
ノーザ ま、まさか・・・ココ。北の大陸?
ノーザで、猫獣人の扱いがどんなモノなのか、フィガロは知らなかった。
ど、どうしよう・・・。
サウザに行かないといけないのに・・・。
思わず、ギュッと目の前のふかふかを掴んでしまう。
「うわっ・・・か・・・かわい・・い。」
ん?
声がする方を見上げた。
!?!
左右の瞳の色が違う銀髪の男がじっとフィガロの事を見ていたのだった。
あれ、この色・・・確か、魔獣を倒してた・・・というか、コイツに抱きかかえられてるのか!!!
こ、殺される!?
その事実に、慌てて降りようとするが、しっかりと抱きかかえられた上に、今度は男の服の中に突っ込まれてしまう。
ええええ!!!? な、何!? あ・・・・、暖かい。しかも、ふかふか・・・。
ポンポンと、服の上から撫でられる。
グルグル・・・フニフニ。ぷふぅ・・・
「! ん? 寝たのか??」
自分の胸元で、小さな寝息を立て始めた黒い塊を一撫でする。
「おー! ボルテ!!戻ったのか!!」
「はい!先程。」
両足を揃え、敬礼のポーズをボルテが取れば、片手でそれを御し、ボルテの方へと近づく。
ボルテの上司である、犬獣人のシュベール第二隊隊長だった。
「ご苦労だったな! ん? なに、入れてんだそれ?」
ボルテの少し膨らんだ隊服の胸元を指差す。
「荷台に紛れ込んでたんで、うちで世話しようかと・・・。」
「どれ・・・、見せてみろ?」
「!? ・・・い・・嫌です。」
ボルテが苦々しく、口にした否定の言葉にシュベールの目が丸くなる。
「はぁ!? いやいや、お前・・・何言ってんだ!? 変なもん拾って来たんじゃないだろう
な!?」
「・・・変な物じゃないです!! 凄い可愛い黒い魔・・・・塊です!!!」
「・・・いや、ボルテ。それ、変だろ?」
「魔って・・魔獣か???」
ボルテは、胸元を優しく抑え込んでは、覗き込もうとする男との攻防繰り広げていた。段々と、テンションの上がって来た二人を、後からきた男達が声を掛けてきた。
「オイオイ、こんな所でお前ら何してんだ?!」
「お、グリズ! いや、ボルテが何か拾って来たんだけど、見せねーんだよ!」
「おやおや・・・、珍しい。隊長馬鹿のボルテが、シュベール隊長の言う事に従わないと? 気になりますね?」
グリズと呼ばれたクマ獣人は、第一隊の隊長であり、その隣には狐獣人の副団長が立っていた。この二人も、ボルテにとっては先輩であり上司もあったが「・・・・嫌です。」と、覗き込もうとするのを、阻止するかの様にくりんと背を向けると、フワッと白銀の尾を一緒に銀髪が揺れる。
その様子に、3 人の男達は面白くなってボルテを抑え込んだ。
「よっし! グリズ第一隊長!シュベール第二隊長!今です!」
「「おう!」」
「な!!! や、やめ!! フォックス!!お前!」
「「「・・・」」」
両サイドを、隊長達に抑え込まれ、フォックスと呼ばれた狐獣人がボルテの胸元を覗き込んだ。
「・・・?魔獣の子?」
「「どれ?」」
「!!」
グルルルル
ぶわわっと、白銀の尾が膨らむ、地鳴りの様な唸り声を出したボルテに、思わず両手を挙げて両隊長が距離を取った。目の前にいた筈の、フォックスはいつの間にかグリズの後ろに隠れていた。
「な!オイ。ボルテ、威嚇するな!!別に、お前からとらねぇよ!」
そうだそうだ!と、グリズ達がシュベールの応戦をする。
「・・・本当ですか?」
「オレが、お前に嘘ついた事あったか?」
シュベールが両手を挙げたまま、ゆっくりと近づく。
少し考えたが、ボルテもその言葉に頷くと、さっきまで張りつめた空気は一気に四散した。
「・・・ありません。」
静かに、見てくださいよ?と言いながら、ゆっくりと隊服の胸元を拡げ、中にいれていた黒い塊を見せる。
さっきのやり取りで、モゾモゾと動いたが少し撫でたら大人しく成ったので、また寝たのだろう・・・。
ボルテは、服の上から塊を撫でていた。
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