189人が本棚に入れています
本棚に追加
第71話:最終話に向けて・・・
カンッ!!!
競り合っていた相手の剣が空を舞う。
その瞬間、ボルテの勝利が確定した。
湧き上がる歓声の中、ボルテは客席座るフィガロを見つけ手を振ると、コロシアム内に悲鳴の様な歓声が響き渡った。
ノーザを旅立ち、半年が過ぎボルテの名は、四大陸中に知れ渡る程になっていた。
銀色の髪は、短く後ろを刈上げ、オッドアイの瞳に少しかかる前髪が余計に、左右の色の違いを引き立てていた。
長身の体躯は、フィガロと出会った頃よりも、厚みも増していた。
未だに、止まない歓声に一礼をしボルテはコロシアムを後にした。
「いや~、まさか本当に優勝するとはな! そんなに、あの猫が大事なようだな。」
「・・・・。」
用意されていた控室に入ると、中で寛ぐ獣人の姿があった。
その姿に、一瞬眉をひそめたがすぐに顔をボルテは作った。
「おいおい。オレは、このサウザの王だぞ? その顔はやめろ。」
「・・・はぁ。 で、一体なんの用ですか?この後、表彰式が有るんですよね?」
「ああ、そうだ。 だから、先にお前には約束のモノを持ってきてやったんだよ。」
「!!」
その言葉に、ボルテの尾が一瞬揺れる。
「くっ・・。やっぱ、尾は正直だな。」
「・・・・。」
スンと澄ました顔に戻ったボルテに、王家の封蝋が押された封書が手渡される。
「あーぁ。お前が負けたら、オレのハーレムに加えたのになぁ・・・・って、そんな怖い顔すんなって・・・。冗談だ。オレも、命は惜しいんでな。それに、番に手を出すほど、馬鹿じゃねぇよ。」
「そうですか。それは良かった。」
「ああ、それに今後もノーザとは仲良くさせて貰いたいしな。さっさと着替えてこい。表彰してやる。」
「・・・・、解りました。」
ゆらゆらと尾を揺らしながら、サウザの王は控え室を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!