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第75話
はぁ・・・。
フィーに会いたい。
大会の前日、ボルテはネロウに会いに行っていた。
すっかりと傷の癒えたネロウの腕には、ネロウに似た子が抱かれていた。
「明日の招待状です。」
「・・・おう。」
「・・・似てますね。」
「ああ。可愛いだろ! ・・・なぁ、フィガロに会わなくていいのか?」
「ここまで来たら、一日位我慢します。」
「・・・そうか。」
ああああああああああああああ。
なんであの時、強がっちゃったんだよ!
はぁぁぁぁ・・・・。
ほぼ、圧勝で終わった大会だったがボルテは、フィガロの元へと行く勇気が無かった。
はぁぁぁ・・・。
ノーザから出て、初めてイースで猫獣人の置かれている状況を肌で感じた。
それと同時に、自分の無力さをボルテは感じていた。
早くウエスへ移動をしたい気持ちも有ったが、自分に出来る事をしたい気持ちで一杯だった。その結果、気が付いた時には何故かイース内で自分の姿絵が売られていた。
意味がわからない。
ウエスへ向かうと告げると派手な装飾をされた馬車が用意されていた。
その夜、獣化してボルテとフィガロはウエスへと向かった。
獣化したフィガロはボルテの背上でずっと震えていた。
その事が、ボルテの胸を締め付けた。
・・・もっと僕が、頼れる獣人だったらフィーを安心させられたのに。
ウエスへの境界で、ボルテは嗅ぎ慣れた臭いに周囲を警戒した。
ボルテは背上に乗せていたフィガロを口に咥え直し、ウエス統治者の元へと走った。
そのまま、気が付けばウエスの警備隊を引き連れて、魔獣討伐へ向かっていた。
戻ってきた時には、何故かウエスでフィガロの兄達を治療する流れになっていた。
その頃から、フィーは時折洗面所へ籠る事が有った。
「グッ・・・カハッ・・・」
「フィー!!? だ、大丈夫?!」
「あ・・・ルテ! お帰り。」
「ただいま・・・って、フィー顔青いけど・・・。」
「うん・・・ボクは大丈夫だよ。それよりも、ルテ・・・また、討伐に行くの?」
「あ、うん。もう一つ小さめの魔獣溜まり見つけたから、片づけてくるよ。」
「そっか・・・、気を付けてね。」
「うん。フィーも無理しないでね。」
フィガロの手が、ボルテの頬を撫でた。
それが、フィーとの最後の会話だった。
討伐から戻ると、フィガロは兄達と一緒にサウザへ向かった後だった。
思わず、ウエスの統治者に向かってポロリと言ってしまった。
「!? な、なんで・・・?!」
「ああ、ネロウ殿の奥方に出産の兆候が来たと連絡が来てな。」
「そ、そうですか。なら、私もサウザへ向かわせて貰いたく・・・。」
「ああ、討伐完了の宴を催すゆえ、是非ともボルテ殿には参加頂きたい。此度の討伐では我が警備隊へのご助力への感謝の場を設けてほしいと警備隊からも乞われてのう。」
「そ、そんな!私の様な若輩者の意見を警備隊の皆さんが柔軟に受け入れて頂けたお陰です。感謝されるような事は・・・。」
「いやいや、その様に謙遜しなさるな。ついでに、ノーザより頂いた親書に返事も用意しておくゆえなぁ。」
「・・・。楽しみにさせて頂きます。」
はぁぁぁぁぁああああ。
結局、ボルテがサウザへ向かったのは、フィガロ達が旅立ったと聞いた10日後だった。
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