第一章

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第一章

「君って、漫画の主人公みたいだよね」 そう友人は嬉しそうに、全身ずぶ濡れの男に向かって言った。 漫画の主人公なんて、そんな優しいものではない。 ただ人より少しだけ運がないだけだと思っている。 友人と遊びに行くと高確率でゲリラ豪雨になる。 何もないところで転ぶのはまだ良いが、転んだ先に出っ張ったレンガがあり強打する。 家の鍵やスマホや財布をよく無くして、戻ってきた事はない。 大切な時に限って腹痛でトイレから出てこれない。 他にも言い出したらキリがないが、運がいいと思った事は一度もない。 気を付けていても、別のトラブルが発生するから防ぎようがない。 そんな不幸体質な生活を送っていても、不幸にならない日がある。 それは友人が隣にいる時だ。 友人は正反対の超が付くほどの幸運体質だ。 なくしものはした事がなく、大切な日はいつも晴れ。 くじ引きは必ず上位景品が当たり、不幸を感じた事がない。 誰が見ても幸運体質が主人公に見えるのに、友人は変な事を言う。 もっと早く彼と会っていたら、不幸だと思う日は少なかったのかもしれない。 彼と会ったのは高校に入ったばかりの時、いつものようにゲリラ豪雨でバスが事故で動かなくなり遅刻寸前だった時だ。 走っても間に合わないだろうと思っていたが、全速力で高校に向かって走っていた。 その時、同じく遅刻寸前で走る男と出会った。 遅刻するというのにヘラヘラ笑っていて、諦めているだけだと思っていた。 「僕、絶対遅刻しないから安心して」 何処からそんな自信が来るのか理解出来なくて、遅刻確定だから聞き流していた。 小学校も中学校も遅刻常習犯になっていたから、気にしていなかった。 気にするのは入学して数日で遅刻すると、教師に目をつけられる事だけだ。 不良じゃないのに、不良だと思われるのは嫌だ。 そんな不安は、いい方向で無駄に終わった。 彼の言った通り、遅刻しないで学校に到着した。 今までだと、こうなると必ず遅刻していた…運良く遅刻しなかった日はないほどに… 彼はもしかしたら幸運体質なのかもしれないと気付いた。 自分が不幸体質なら、幸運体質も居ても不思議じゃない。 幸運と不幸がいれば緩和されると思い、彼と友達になる事にした。
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