第一章

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明るい彼はすぐに受け入れてくれて、彼といると普通の人間になったかのように不幸にならなかった。 だからといって、幸運体質になったわけでもない。 普通でいい、普通が一番だと大学生になった今でも思う。 大人になると、少しだけ不幸体質が緩和されたが不幸は続いている。 その時、友人から借りたお守りが彼の代わりになっていた。 不幸体質を知っているから、協力してくれている。 今でも大切な友人だ、大学が違っても休日に遊ぶほどだ。 今日も友人に誘われて、友人の住むマンションに向かった。 友人に迎えられて、部屋に入ると紙が床に広がっていた。 慌てて紙を掻き集めていて、手伝って自分も集めるとすぐに床が綺麗になった。 「ごめんね、散らかってて」 「仕事か?大変だな」 「そんな事ないよ、毎日が楽しいよ」 友人の言葉には嘘偽りがなく、本当に楽しそうな顔をしていた。 高校の時に言っていた夢が叶ったから、羨ましい。 自分はまだ、なにがしたいか見つからない…会社員に落ち着きそうな気がする。 そうだ、友人に借りていたものを返さないといけない。 友人にとっても大切なお守りだから、ずっと借りているわけにもいかない。 カバンからお守りを取り出すと、友人はそれを受け取った。 紙を机の上に置いて、ゲーム機を手に取っていた。 今日はゲームをするために友人の家に来ていた。 自分は普通の大学生で、友人は大学生兼売れっ子の漫画家だ。 男同士の恋愛、ボーイズラブ…通称BLと呼ばれる漫画を描いていた。 元々絵が上手かった友人は、高校生の時から何度か漫画を描いて見せてくれた。
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