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後日取材
えっと、週刊〇〇の記者さんよね。どうぞ、入って。そう、ここでいいの? じゃあここで。
もうあなたで三人目なのよ、取材に来たの。こういってはあれだけど、慣れちゃったところはあるの。
あの事故についてよね。
十年前くらいね、垂井さんが隣に引っ越してきたのは。
お隣さんだしね、奥さんとはしょっちゅう話したりしてたの。たまに実家から送られてきたフルーツとかくれたりして、とても明るくて接しやすい人だったわ。
旦那さんもいい印象よ。会う時はいつもにこにこと挨拶してくれるし。たしかお医者さんなのよね。
それに、垂井さんところのお兄ちゃん、たしか今、小学五年生だっけ。とってもいい子よ。いつも、山田のおばちゃんって親しく呼んでくれて、元気のいい挨拶をしてくれるわ。将来はお父さんの病院を継ぐんだって、ほんと、出来た子だよねえ。
とっても幸せそうな、本当に理想的な家族だった。なのに、まさかあんなことになるなんて、ほんとに気の毒。誰も悪くないっていうところがまた、やるせないわよねえ。
そんなこと聞きに来たわけじゃないよね。
そう、マリーちゃん、あ、垂井さんところの飼い犬についてよね。とってもおとなしい子だったのよ。
よく楓太君、垂井さんところのお兄ちゃんね、と一緒に散歩してるのを見かけてたけど、私に一度も吠えたことなんてないし、他人に吠えたりしたところなんてのも見たことないほど大人しくて、他の犬に吠えられたことはあっても先に吠えたりすることはなかった。たしかに、シェパード犬だし、見た目は怖いと思う人もいるかもしれないけど、本当にしつけが行き届いてておとなしくて優しい子だったのよ。
だから、あんなことになるなんて思いもしなかった。
他の人も同じようなことを言ってる? やっぱり。
でも、やっぱり動物だから、人が予想もできない行動をしちゃうのよね。
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