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最終話:僕は永遠に君の犬
「なので、うちのタロウが海に向かって激しく吠えるので、何かと思って海を良く見たらこちらの男性が沈んで行きそうになっているのが見えたんです」
僕は、助けられてしまった。犬と、このお節介な女のおかげで、だ。
そんなわけで僕は今病院のベッドに横たわっている。翠の所に行きたかったのに、本当に大きなお世話だ。
「君ね、何があったか知らないけど、命を粗末にしちゃいけないよ。どんなに辛くても、明けない夜は無いんだ」
警察官が僕に説教を垂れて来る。良く聞く綺麗事を並べ立てられると癪に障る。
「何か辛い事があるなら、行政の相談窓口もあるし、病院に通う事だって出来る。そういう専門機関に相談に行ったらどうだい?」
「僕が行くべき場所は、刑務所だ……」
「は?」
翠の所に行けなかった。死体が見付かるのは時間の問題だろう。ならば、翠の死体が腐る前に発見してもらって、綺麗な内に荼毘にふしてあげた方がいい。だって、翠は世界一美しい女なんだから……。
「僕は人を殺しました。最愛の女を殺しました」
翠……僕は頃合いを見て翠の所に行くからね。このまま安穏と生きたりはしないからね。それに、僕は翠を他の男に渡すつもりなんて無いからね?
だから、僕に命令してよ。僕を愛してよ。僕にキスしてよ。僕を抱いてよ。
だからね、ご主人様……。
僕は永遠に、あなたの犬です。
────了
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