4.君の元へ行く

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4.君の元へ行く

 翠……翠……僕の美しい翠……。  今、僕も君の傍に行くよ。あ、君って言うと翠は怒るっけね。そうだな、ご主人様。やっぱり翠に似合う呼び名はご主人様だ。  僕は翠といつか来た美しい湘南の海に来ていた。もう寒い時期だっていうのに、サーファーがちらほらと波乗りを楽しんでいる。  僕は靴を脱いで、砂浜の感覚を楽しみながら海に一歩、また一歩と入って行った。  手には愛しい翠の豊かな髪の毛の束を握りしめている。  僕は翠の死体の一部と一緒に海に入る事で、共に海に還る事が出来ると思っていた。だから、持って来た。本当は翠の死体そのものと一緒に海に入りたかったが、そんな事をしたら目立ちすぎてしまう。 「今……今そちらに行くからね、翠……」  海水が腰のあたりまで来る。  次は胸のあたりまで。  サーファーたちは自分達の楽しみに夢中でこちらになんか気付かない。  その時だった。 「ワン! ワンワン!! ワンワンワン!!!」  犬がこちらに向かって激しく吠えている。  うるさいな、邪魔するな。これは僕と翠の神聖な儀式なんだ。 「皆さんこちらです! こちらで人が溺れています!!」  女の甲高い叫び声が聞こえる。  そうすると、屈強なレスキュー隊たちが僕の方をめがけて海の中をずいずいと突っ切って来た。 「君! 大丈夫か!? もう心配要らないよ!」
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