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そんなこんなで6月20日
「久しぶりに学校の外にでた気がする!」
「神井うるせぇ」
「ダーリン酷い!」
「お前の旦那になったつもりはない」
神井くんと越前くんと並んで体育館の前に立っていた。公式戦が行われるその体育館はジャージを着た選手らしき人やそれを見に来たであろう人達でごった返している。
運動部はおろかそもそも部活動というものをしたことがない、俺からするともはや未知の世界のような気さえしてしまう。越前君は幼馴染みということもあって、これまでに何度か永久くんの試合を見に行ったことがあるらしく慣れていた。ただ黙って彼について行けば、いつの間にか観戦席に着いていた。
「こういう場所来るの久々」
「神井は元バレー部だもんな」
「え、そうなの?」
ここにきて新情報だ。
ちょっと驚いた顔をして神井くんを見上げれば、彼はいたずらっ子のように笑って「実はスポーツ男子だったんだよね~」と教えてくれた。
高校で続けなかった理由はただ単純に趣味に時間を取るためだったらしい。
界隈ではそれなりに有名な選手でもあったため、何やらひと悶着あったらしいが今ではとても楽しく毎日趣味に没頭しているとか。
「よかったね」
「そっ!しづしづが来てから趣味も捗ってるしね!」
果たして趣味が捗るとはどういう意味なんだろうかと、首を傾げたが越前くんが気にするなというように首を横に振っていたからこれ以上は突っ込まないことにした。
開場してすぐだからか、まだ最初の試合が始まる1時間前だからなのか席はそこそこ空いている。越前くんが「俺らのとこはあっち」と指さした方に、どうやら俺たちの学校の子たちが集まっているらしかった。
「あ、えーちゃん!しづ!来てくれてありがとね!」
コート内で練習をしていた永久くんをぼんやり眺めていると、それに気づいたらしい彼がこちらを見上げてにこりと笑った。越前くんは永久くんに向かって「がんばれよ」と言っているが、そんな勇気の欠片もない俺はがんばれの気持ちを込めて手を振った。
「え!俺は!?」
「あはは、噓だって。カノもありがとね!」
永久くんと神井くんのこういうやり取りももはや日常と化していた。
さっきからちらちらとこちらを見ていた女の子たちが「え、俺…?」「あの子男だったの?」「彼女かと思った…」と言ってのが聞こえてしまって、そういえば神井くんは可愛い顔をしているんだったと思い出した。
「黙ってればいいのにな…」
「え、ダーリンそれは酷いんじゃない?!」
どうやら越前くんにもその声は聞こえていたらしく、神井くんをじっと見つめてから深いため息を吐いた。
周りにいる女の子たちはほとんどが永久くんのファンと言うやつらしい。これも越前くんが教えてくれた。
おそらく先輩であろう人たちに小突かれて、笑っている永久くんを見てキャーキャーと黄色い歓声を上げていた。
やとぱり永久くんはすごいなぁ…なんて
ぼんやりと考えた
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