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試合はなんと言うか、圧巻の一言に尽きる。
バスケに限らずこう言った試合を見た経験がほとんどないし、ましてやこんな距離で生で見るなんて初めての経験だったからかぶわぁっとよく分からない何かが胸に込み上げてくる感じがした。
「相手のラフプレー多いな」
「やっぱ?」
「審判もザルだし」
「明らか狙ってやってるよね。永久っちとか特に酷いじゃん」
越前くんの言葉の意味を神井くんは理解してるらしく、不機嫌そうに顔を歪めたままじっとその試合を眺めていた。
かくいう俺は全く分からないので、「バスケってこんな激しい競技なんだ…」と頭にクエスチョンマークを浮かべながらただ無事に終わることだけを考えた。
長いホイッスルの後、大きな歓声が上がり、自分たちの学校の選手がガッツポーズをする。それを見て、あぁ勝ったんだと理解した。
「しづ〜!見てた!?ねぇ、見た?!」
「うんっ…!カッコよかったよ…!」
「え!ほんとに?!!」
笑顔でこちらに走り寄ってきた永久くんに、ついテンションが上がった。何から言えばいいか分からなくて忙しなく手を動かす俺を見て、永久くんは嬉しそうに笑った。
初めてバスケの試合を見たのだ。
ボールの弾む音だとかシューズの音だとか、歓声だとか全部が初体験で自分は思っていた以上に興奮していたらしい。
彼の手から離れたボールがネットをくぐった時には鳥肌がたったくらいだ。
「あははっ!しづしづかわいい〜」
神井くんは笑って、「今度はしづしづにバレー見せてあげるね!」と言いながら俺の頭をよしよしと撫でた。
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