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草木が埋め尽くす、和洋折衷の大きな家の庭の片隅で、紺瑠璃の単衣を着た少年が一人、誰を待つでもなく立ち尽くしていた。
誠は彼を知っていた。
少年は、整い過ぎた美しい顔をしていた。漆黒の髪に、憂いを帯びた黒水晶の瞳、白磁の様に透き通った白い肌、儚げな華奢な身体付き、彼の名は蘇芳、名前の如く深い紅色をイメージとした容姿をしている。
誠は丁度、蘇芳と出くわした。
「誠さん、兄さんなら今、家に居ないよ」
人の気配を鋭敏に感知した蘇芳は、誠の方を向いた。
彼は兄、蒼の友人である誠に、何時ものように食ってかかるような言い方をした。
「じゃあ、どこにいるの？」
負けずに誠は訊ねる。しかし、返って来る返事を想像してみると皮肉だ。
案の定、蘇芳は目線を誠から外して素っ気なくこう言う。
「兄さんになんの用？」
蘇芳は紅い唇を小さく動かしながら、誠を睨め付ける。
「読み終わった本を、返しに来たんだよ」
「それなら、俺が預かっておくよ」
蒼に逢いに来たと言えずに、誠は俯いた。
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