Worm Moon 2

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Worm Moon 2

 雅のホームドクターである四條(しじょう)陵は、四條総合病院の院長だ。 まだ若いが患者は勿論、スタッフからの信頼も厚い。病院も陵同様評判が良いときている。 とかく、総合病院の受診は長時間待たされた挙句、診察時間が短いのが相場と決まっている。だが陵は代替わりに伴い、待ち時間を短縮する工夫や、待ち時間を有効に活用出来る空間に変えた事で満足度を向上させたのだ。 陵は温和な雰囲気と口調で患者を癒すだけでなく、中性的な顔立ちも相まって老若男女を魅了している。院長を一目見たいと、院長診察を希望する患者が絶えない。 多忙な陵だが、去年の不幸な火事の際、雅が救急搬送された事がきっかけで主治医を買って出たのだ。 雅は京介から、天は二物を与えずと云う諺と、才色兼備と云う四文字熟語を陵を通して学んだ。雅が陵をかっこいいのに優しいねと誉めた時の事だ。 「天は二物を与えずと云うが、陵先生には当てはまらないな」 「天は⋯⋯に?」 「完璧な人はいないって事だ。陵先生は穏やかだし雅が云うようにかっこいい。それにドクターだ。容姿も性格も申し分ない。完璧なんだろうな。男性に使うのは少し違うだろうが、陵先生の様な人を才色兼備と云うんだろう」 「さいしょく⋯⋯」 雅はまたもや聞き慣れない言葉に頭をフル回転させたが、一向に理解出来ない。京介は雅が理解し易い言葉を選んで説明した。 「才色兼備と云うのは、かっこいいのに頭も良いって事だ」 「そうなんだ?」 雅はニコニコと微笑みながら、京介の頬に両手を伸ばすと、優しく挟んだ。 「だったら京介もだよ」 「俺か?」 「そうだよ!京介もかっこいいし頭も良いもん」 「お前の、かっこいいと頭が良いと感じる基準が分からないが」 「ボクは一番京介がかっこいいって思う!でもね、この前、陵先生が保育園のお迎え来てくれたでしょ?その時、かおり先生とちさ先生が陵先生を誉めてて」 「そうだろうな」 雅は可愛らしい眉を少し顰め、陵が迎えに来た事でテンションが上がった保育士の顔を思い出した。 二人共、陵を見るなり保育士の顔ではなくなった。幼い雅には理解出来なかったが、雅を足がかりに陵と繋がって、あわよくば玉の輿を狙おうと画策していたのだ。 「でもボクの一番は京介だもん。そりゃ陵先生も柊吾(しゅうご)さんも神威(かむい)さんもかっこいいけどねっ」 京介は頬を挟む小さな手に自らの手を添え、目尻を下げ口角を上げた。 「それは光栄だ」 陵は院長、柊吾は弁護士、神威は大企業の社長。職業だけでも垂涎の的だろうが、三人揃って独身で美男子なのだ。しかもそれぞれタイプの異なる美貌の主だ。恋愛対象としても結婚相手としても申し分ない。 保育士の態度は一般的だ。恐らく雅には受け入れ難いだろうが。
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